映画『生きる LIVING』──もし明日が最後でも

映画余録

2022年製作/103分/G/イギリス
原題または英題:Living
配給:東宝
劇場公開日:2023年3月31日

以前、黒澤明監督の『生きる』(1952年)を観たことがあります。

今回観たのは、その作品を第二次世界大戦後のイギリスを舞台に、
カズオ・イシグロが脚本を書いてリメイクした『生きる LIVING』でした。

オリジナルへの敬意を感じながらも、とても自然に新しい作品として成立していて、
「上手にリメイクされているな」と思いました。
そして観終わったあと、なぜかもう一度オリジナルの『生きる』を観たくなりました。

映画の主人公ウィリアムズは、淡々と同じ毎日を繰り返しています。
同じ電車に乗って、同じ仕事をして、同じ時間を過ごす。
けれど、ある日、自分に残された時間が長くないことを知ります。
そこから彼は、「何をして生きるのか」を考え始めます。

この映画を観ながら、私は時々人から聞かれることを思い出しました。

「これまでの人生で後悔していることはある?」

不思議なことに、私はその質問にうまく答えられません。
もちろん、失敗したこともあります。
「あの時こうすれば良かった」と思ったことが、一度もないわけではありません。
でも、それを後悔とは少し違うように感じています。

たぶん私は、過去の自分の選択が今の自分を作っていると思っているからかもしれません。
今の私は、今までの人生の延長線上にいて、その中で今がいちばん幸せだと思っています。

だから、「もし明日が最後です」と言われても、
何か大きなやり残しが思いつかない気がするのです。
途中になっていることはたくさんあります。

読みかけの本。
考え途中のこと。
まだ上手になっていないこと。

でも最近は、それを「完了していないもの」だとは思わなくなりました。

途中になっていることは、「完了しなかったこと」ではなくて、
「今の自分には必要なところまで来たもの」なのかもしれないと思っています。

何だか少し変なことを言っている気もするのですが。

でも『生きる LIVING』を観ながら、
人生って全部を終わらせることが大事なのではなくて、
自分が納得しながら過ごせているかの方が大事なのかもしれない、と思いました。

もし明日が最後でも。
そんなことを考えたとき、「もっとこうしておけばよかった」ではなく、
「悪くなかったな」と思えたらいい。
そんな人生がいいなと思いました。

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