好日録 / 読書余録
読書余録『インド人は悩まない 「考えすぎ」から解放される究極の合理思考』
著者/ インド麦茶
出版社/ダイヤモンド社
出版年/2025年
カテゴリ/東洋思想
「皆、心に1人、インド人を宿そう!」
なんとも強烈な言葉です。
『インド人は悩まない――「考えすぎ」から解放される究極の合理思考』。
タイトルからしてなかなかのインパクトですが、読んでみると、これがとても面白い本でした。
私は以前、仕事でインドの社員とやり取りをする機会があり、実際にインドのオフィスへ出張したこともあります。
だからこの本を読みながら、
「ああ、わかる、わかる」
「そうそう、こういうところある!」
と、当時出会った人たちを何度も思い出してしまいました。
まず、やってみる
この本で紹介されるインド的な考え方は、とにかく力強い。
「相手を困らせるかもしれない」
「失敗したらどうしよう」
「こんなことを言ったらどう思われるだろう」
そんなことを考える前に、まずやってみる。
いわば「DO文化」です。
日本で生活していると、何かをする前に相手のことを考えたり、周囲との調和を気にしたりすることが多いように思います。
それは日本人の素敵なところでもあります。
でも、その気遣いが強くなりすぎると、まだ何も起きていないうちからあれこれ考えて、動けなくなってしまうこともあります。
そんなとき、心の中のインド人が、
「とりあえず、やってみれば?」
と言ってくれたら、案外すんなり動けるのかもしれません。
とにかく主張する、そして簡単には曲げない
私がインドの人たちと仕事をしていて特に印象に残っているのが、彼らのアグレッシブさです。
とにかく自分の意見を言う。
そして、簡単には曲げない。
問題が起きたときにも、
「いや、それは自分のせいではない」
という主張や言い訳が次々と出てきます。
仕事をしているこちらとしては、
「いやいや、そういう話じゃないでしょう」
と思うこともありました。
でもこの本を読んでいると、それさえも「自分を守るための合理性」として見えてくるから面白い。
何でも自分のせいにして抱え込んでしまうより、ときには「本当に私のせい?」と考えてみる。
これは案外、大切なことなのかもしれません。
抜け目ない。でも、とても人間らしい
インドの人たちと接していて感じたのは、その抜け目なさだけではありません。
とても人間らしいのです。
自分のことはしっかり主張する。
損をしないように考える。
使えるものは上手に使う。
一方で、知り合いや友人に対しては、とても親切だったり、思いやりを見せたりする。
合理的なのに、人間関係まで冷たいわけではない。
その一見すると矛盾しているようなところも、私にはとても興味深く感じられました。
日本人も、もう少し自分のために生きてもいいのかも
もちろん、この本に書かれていることを、そのまま全部真似すればいいとは思いません。
「他人を使う」
「家族を使う」
「言い訳をする」
文字だけを見ると、ちょっとギョッとするものもあります。
でも、この本が面白いのは、それをそのまま推奨するというより、日本人が当たり前だと思っている考え方を、反対側から眺めさせてくれるところだと思いました。
人に迷惑をかけてはいけない。
言い訳をしてはいけない。
自分のことより周りを考えなくてはいけない。
どれも悪いことではありません。
むしろ、日本人の美徳でもあると思います。
でも、それで自分ばかりが疲れてしまうのなら、ときには少しくらい「自分のため」を優先してもいいのかもしれません。
心に一人、インド人を
読み終わって思ったのは、私はインド人になりたいわけではない、ということでした。
日本人の気遣いや、相手を思いやるところも、私は好きです。
だから、どちらか一方を選ばなくてもいい。
インドの合理性と、日本の美徳。
この二つがうまく合わさったら、案外、怖いものなしなのではないでしょうか。
周囲への思いやりは忘れない。
でも、必要以上に自分を責めない。
言いたいことはちゃんと言う。
まだ起きてもいないことを考えすぎない。
そして、ときには「まずやってみる」。
そう考えると、
「皆、心に1人、インド人を宿そう!」
というこの本の言葉が、読後にはなんだか妙にしっくりきました。
これから何かを考えすぎて動けなくなったときには、私も心の中のインド人に聞いてみようと思います。
「で、あなたならどうする?」
きっと、私があれこれ考えている横で、
「そんなことより、まずやってみれば?」
と言われそうな気がします。